NewSphere 2018/09/18

 中国政府が少数民族ウイグル人への弾圧を強めていると報じられている。国連や複数の人権団体によれば、100万人を超えるウイグル人が、再教育キャンプに送られ、長期にわたり精神的、肉体的虐待を受けているということだ。ところが普段は人権問題に厳しい西側諸国や、イスラム教徒が多い国々などから面と向かった批判は出ていない。台頭する中国への国際社会の姿勢が問われている。

◆イスラム教で言語も別 中国に馴染まないウイグル人
 ウイグル人は、中国新疆ウイグル自治区に住むテュルク語を話す少数民族で、そのほとんどがスンニ派のイスラム教徒だ。民族的、文化的に見れば中央アジアとのつながりが強く、この地域を東トルキスタンと呼ぶ人々もいる。ガーディアン紙によれば、ウイグル人は新疆の人口2400万人のうち、約1100万人を占めるという。
 新疆では以前から独立を求める動きがあり、2009年には首都ウルムチで200人の犠牲者を出す民族的暴動が起きた。また、他の都市でもウイグル人によるとされるテロ事件が起きている。習近平氏が共産党のリーダーとなった2012年以降、イスラム教徒によるテロと、独立を求める「イデオロギー・ウイルス」の撲滅を名目に、ウイグル人に対する取り締まりが強化された。
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)に寄稿した、新アメリカ安全保障センターのシニア・フェロー、ロバート・D・カプラン氏は、新疆は中国の「一帯一路」構想の要所だと指摘し、ウイグル人を服従させることがプロジェクトにとって欠かせないと指摘している。

◆犯罪者と同じ 政府による監視は庶民にまで
 ウイグル人は中国政府の厳しい弾圧について、共産党の支配を確実にしつつ、民族全体を犯罪者と見なし、アイデンティティや宗教、文化や言語を消し去ろうとする行為だと捉えている。推定100万人ものウイグル人が収容所に送られ、党の教義を教え込まれ、北京語を話すよう強要され、自己批判を通じての思想の矯正を命じられているという。また、数千人が刑務所に収容されている(ガーディアン紙)。
 ブルームバーグによれば、新疆の町には監視カメラ、警察署、検問所が張り巡らされている。住民所有の乗り物には衛星追跡システム設置が命じられ、個人が市場やガソリンスタンドに入るのにも、顔のスキャンが必要だ。また、海外旅行は禁止だという。この地域は、国家による強力な監視システムの試験場となっており、ガーディアン紙はまるでジョージ・オーウェルの1984の世界だと評する。

◆信念よりお金? 口を閉ざす国際社会

 国連の人種差別撤廃委員会は、中国が新疆ウイグル自治区を「巨大な収容キャンプ」にしてしまったと非難している。これに対し中国は、国連や人権団体の報告は間違いであり、中国の少数民族に対する政策は融和と協調を促進するもので、再教育などの事実は一切ないと否定している。国際監視団受け入れの要請をした国連のミシェル・バチェレ人権高等弁務官に対しても、一方的な情報を聞き入れていると批判し、国連は中国の主権を尊重すべきだと一蹴している。
 今のところアメリカが、特定の中国企業と政府関係者に対し制裁を加えることを検討しているが、中国からの貿易や投資を必要としている欧州各国の動きは鈍い。ガーディアン紙は、自らが誇る民主主義の信念や価値観、国際法の順守などとはかけ離れた習主席のやり方を批判できず、欧州はダブルスタンダードに陥っていると指摘している。
 イスラム教徒が多数を占める国々も、貿易や援助での主要相手国である中国との友好関係を考え、沈黙を保ったままだ。また、中国政府の他国の外交政策に口を挟まないという方針も今回は役に立っているのではないか、とブルームバーグは述べる。
 NGOのヒューマン・ライツ・ウォッチは、新疆の人権侵害は、文化大革命以来最大規模のものだと懸念する。経済力で国際社会をも黙らせる中国。ウイグル弾圧を止める有効な手立ては、当分なさそうだ。

Text by 山川 真智子


https://newsphere.jp/world-report/20180918-2/