産経ニュース 2018.9.13 07:00

 中国・新疆ウイグル自治区で、多数のイスラム教徒の少数民族ウイグル族らが「再教育収容所」に入れられているとされる問題への関心が米国で急速に強まっている。トランプ政権は自治区トップへの制裁を検討中と報じられてきたが、米議会では超党派の上下両院議員がトランプ政権に対し、制裁実施を促す書簡を送り、米主要紙も再教育収容所を問題視する社説を掲げて、中国による人権侵害を非難した。
 「制裁で米国として中国が行っていることを座視しない意思を示せる。中国は全体主義的な行動を止めないかもしれないが、高官への制裁は最終的には効果をもたらすはずだ」
 ウイグルの合法的な独立を目指す東トルキスタン国家覚醒運動のサリー・フダヤール氏に制裁について尋ねると、国際社会からの圧力強化が長期的に効果が出ると強調した。
 フダヤール氏は8月30日の「強制失踪の被害者のための国際デー」に合わせて米首都ワシントンで開いた記者会見で、ウイグルでは「再教育」を名目に親と子供が引き離され、女性が強制労働に従事させられているとして国際社会の協力を訴えた。「少なくとも300万人」が拘束されたとも述べた。
 また、米国のNPO「ウイグル人権プロジェクト」のニコール・モーグレット氏は、イスラム教徒約1000万人以上の10人に1人に当たる100万人以上が拘束され、「拷問や虐待を受け、イスラム教を否定し、習近平国家主席や中国共産党をたたえるよう強制されている」と訴えた。

 フダヤール氏らは中国政府に圧力をかけるため、人権侵害に関わった外国政府高官に対して適用される「グローバル・マグニツキー法」に基づく制裁の実施を米政府や議会に働きかけている。第一の標的は習氏に忠実な陳全国・新疆ウイグル自治区党委書記だ。米メディアによると、陳氏は2016年に就任して以来、自治区のトップとして「再教育収容所」の整備や、ハイテク設備を使った住民監視システムの構築に当たったとされる。
 ルビオ(共和)、メネンデス(民主)両上院議員を含む超党派の上下両院議員17人は8月28日、ポンペオ国務長官とムニューシン財務長官に宛てて書簡を送り、グローバル・マグニツキー法に基づいて陳氏を含む共産党幹部や中国政府高官に対する制裁を実施するよう求めた。
 書簡は「自治区では人権上の危機が進行中であり、少数派のイスラム教徒が恣意(しい)的な拘束、拷問の対象となり、デジタル化された監視システムで日常生活は全面的に監視されている」と指摘し、米政府だけでなく国際社会として中国に対して強い姿勢で臨むよう訴えている。
 8月にスイス・ジュネーブで開かれた国連の人種差別撤廃委員会では、中国政府代表団が、100万人以上が再教育収容所に強制収容されているとの指摘は「完全な捏造だ」と否定した。

 しかし、米紙ウォールストリート・ジャーナルは同月29日付の社説でその際に中国側が「軽微な罪を犯した者を職業技術教育就業訓練センターで学ばせている」と述べたと報じられたことを挙げ、「中国政府が初めて(収容所の)存在を認めた」とした。また、「習氏の下、迫害は毛沢東の文化大革命以来で最も極端なものになっている」と非難した。
 ペンス副大統領も「数百万人」のイスラム教徒が再教育収容所に入れられているとの見方を示しているが、陳氏らへの制裁は発表されていない。人権団体関係者は「米中の貿易戦争が激化する中、トランプ政権は戦略的にその時期を判断しようとしている」と語り、制裁の実施は時間の問題との認識を示した。
(ワシントン 加納宏幸)


https://www.sankei.com/premium/news/180913/prm1809130003-n1.html