2017.10.28 13:00 産経ニュース

 北京在住の人権活動家、胡佳さん(44)は中国共産党大会の期間中、雲南省大理や広西チワン族自治区の桂林など内陸部を転々とした。厳戒の首都から追い出すため国家が強制した「旅行」だ。公安警察官が同行した。
 習近平総書記は開幕式での政治報告で「法による国家統治」を強調したが、胡さんはあきれる。「私が北京を離れなければいけないのは、どの法律が根拠になっているのか」
 ただ共産党は、人権や民主主義を明確に主張する国内の活動家たちだけではなく、もの言わぬ大多数の民衆をも潜在的脅威として恐れている。
 習氏は演説で、人々の「民主や法治、公平、正義などへの要求が日増しに高まっている」と認めたが、その解決策は政治的自由の拡大とは正反対だ。
 大会では「『党政軍民学』の各方面と、『東西南北中』の各地方において党が一切を指導する」との内容を党規約に盛り込むことが決まった。民間の活動も含めてあらゆる事象を共産党が統制すると宣言したのだ。
 2期目習近平指導部が発足した翌日、人民日報など主要紙は1面で、総書記に再選された習氏の大型顔写真を紙面中央に掲載した。同紙は1982年以降、毎回1面に各常務委員の顔写真を掲載していた。
 だが26日付の1面は顔の判別が難しい7人全員の整列写真を掲載するにとどめ、習氏以外の顔写真は3面に回して格の違いを強調した。

 習氏への権限集中と集団指導体制の形骸化が、反発を招きながらも党内で容認されてきた背景には、独裁維持への根深い危機感の共有がある。船頭が多少強引でも、船が沈むよりはましなのだ。
 党大会期間中、中国のインターネット上では、幼稚園児たちがテレビの前に座らされ、習氏の演説中継をぼんやりと眺める写真が出回った。習氏が強調する「愛国主義、集団主義、社会主義教育の強化」を実践するため、全国の教育現場に指示が出された。
 思想・言論の統制が強まる中国から今年ドイツに移住した芸術家の男性(51)は「文革を支持した紅衛兵世代が、当時の理想を実現しようとしている。第2次文革が間もなく到来する」と予言する。
 一方、習氏が推進しているのは共産主義路線ではなく「国家社会主義と中華ナショナリズム」と指摘するのは、亡命ウイグル人組織を束ねる「世界ウイグル会議」のトゥール・ムハメット日本・東アジア全権代表だ。
 習指導部は2015年以降、学校でのウイグル語の使用を禁止し、数万人の漢族の教師を新たに採用して自治区内に送り込んだ。ムハメット氏は「ウイグルのアイデンティティーを根絶し完全に同化させようとしている」と断じ、痛罵した。「習が目指しているのは毛沢東の再来ではなく、ヒトラーのファシズムだ」

 この企画は藤本欣也、河崎真澄、西見由章が担当しました。


http://www.sankei.com/world/news/171028/wor1710280016-n1.html