2017.10.27 11:00 産経ニュース

「中国の悲劇は、経済政策の立案や遂行で実力ある人物から権力を奪い、実力なき人物にかつてない権力を与えたことだ」。北京の外交筋が顔をしかめた。前者は李克強首相を、後者は習近平総書記(国家主席)をさす。
中国共産党の新たな最高指導部7人が披露された25日の記者会見。習氏が誇らしげに手を振りながら登壇したのに対し、習氏に続いた序列2位の李氏は伏し目がちに入場し、緊張のせいか額に汗をかいていた。
外交筋は「5年前の党大会後の会見では、李氏も習氏と同じく手を振って入場したが、5年間で権力の差が極端に広がって、習氏と同じ動作を遠慮せざるを得なくなった」と分析した。
苦学の末、北京大学で経済学博士号を得た李氏は首相へ就任後、金融の自由化や赤字続きの国有ゾンビ企業の統廃合など「リコノミクス」と呼ばれた経済構造改革策を相次ぎ打ち出して、期待を集めた。
だが、経済成長減速が顕著になった2013年12月、共産党が新設した「中央全面改革深化指導小組」の組長に習氏自ら就任。さらに、治安対策やインターネット統制などで次々と「小組(党のタスクフォース)」をつくり、習氏はすべて組長の座に就いた。金融も含め、あらゆる政策で強権をもつ司令塔となり、李氏からは経済政策を取り上げて、小組の方針に実行部隊の国務院を従わせる“組長政治”に構造を変えた。

その弊害が2年前の上海株急落だ。投機マネーが逆流して世界同時株安に発展。中国の金融当局は慌てて強引な株価下支え策を繰り返した。中国人民銀行(中央銀行)は人民元を切り下げたが、想定外の元安と資金海外逃避に驚いて買い戻すなど、市場経済化とは逆行する稚拙な経済政策に世界の金融市場は振り回され続けた。
決定権を奪われた現場はマーケット急変に迅速に対応できない。「“見えざる手”が働く金融市場を理解できない習氏は、強権で市場をすべて支配できると勘違いしている」との厳しい批判が市場には渦巻く。
市場混乱の次に懸念されるのは、中国発の世界金融恐慌だ。高速鉄道建設など採算度外視の公共投資に明け暮れた結果、金融機関から借金した政府系の債務、民間の債務を合わせた債務総額は今年9月、国内総生産(GDP)の260%に達した。国有企業の債務超過を加算すると実際には300%を超える危険水域だ。1990年代の日本のバブル崩壊は220%で起きたが、中国では地方政府や国有企業などが債務を互いにつけまわすなど強硬手段で顕在化を抑えて、自転車操業でしのぎ続けているのが実情だ。

北京の経済学者は、「中国が国境を接する北朝鮮の軍事行動エスカレートなどの地政学リスクが高まる事態となれば、脆弱な中国の不動産市場は簡単に急落する。不動産を担保にした融資は、相次ぎ不良債権化して金融機関は経営危機に陥る。破綻の連鎖は海外に急拡散する」と警告した。
習1強体制に「金融恐慌」を防ぐ「実力」はあるのか。「強国路線」とは裏腹に、最悪のシナリオへの恐怖感が広がっている。


http://www.sankei.com/world/news/171027/wor1710270024-n1.html