The Wall Street Journal 2016 年 6 月 8 日 17:07

日中の飲食を断つイスラム教の宗教行事「ラマダン(断食月)」が6日に始まった。それは中国において、1000万人のウイグル族のイスラム教徒が暮らす新疆ウイグル自治区で締め付けが強化されることを意味する。一方、タイでは身柄を拘束されたウイグル族難民が中国への送還を免れようとハンガーストライキを行っている。真のイスラム恐怖症とはどのようなものだろう。

新疆ウイグル自治区政府は先週ウェブサイトで、「中国共産党員、幹部、公務員、学生、未成年者はラマダンに断食してはならず、宗教活動に参加することも禁じる。ラマダンの1カ月間、飲食店は休んではならない」と通達した。さらに、学生と教師がモスクに入ることも禁じている。このほか先週時点で、少なくとも一つの県の住民はパスポートを申請する前に、警察に指紋とDNAのサンプルを提出することが義務付けられていた。

中国国務院(内閣)は先ごろ、新疆ウイグル自治区の宗教の自由は「歴史上の他のどの時期よりも認められており」、ラマダンの行事に現地当局が「干渉することはない」と断言したが、とんでもないことだ。実際のところラマダン期間中の弾圧は、イスラム教徒の女性がベールをかぶることや男性があごひげを生やすこと、ウイグル語を学校で教えることなど、自らの独裁政権を脅かしていると共産党が考える宗教的・民族的アイデンティティーを示すものを制限するという中国が長年やってきたことと何ら変わりはない。

ウイグル族はかつて新疆ウイグル自治区で圧倒的多数を占めていたが、中国政府は数十年にわたり漢族を同自治区に送り込んでおり、現在、両民族の比率はほぼ半々となっている。当局による漢族びいきや、ウイグル族のアイデンティティー抑圧策は激しい反発を招き、新疆ウイグル自治区内外で治安部隊が襲撃され、テロ事件が発生している。中国政府は、ウイグル族の人権活動家をすべて分離主義者とテロリストに仕立て上げている。同自治区のエネルギー資源と、中央アジアに近いという戦略的な意味合いの重要性が高まるにつれて、ますます神経をとがらせている。

その影響の一つがウイグル族難民の増加だ。タイでは14年以降、70人以上が身柄を拘束されている。そのうちの約半数が5月31日にハンガーストライキを開始し、6月6日に公開書簡を発表した。「タイ政府は、強制送還に伴う虐待や拷問、投獄の差し迫った脅威からウイグル人を守るのではなく、140人以上の同胞を中国に強制送還した」とし、タイ当局と国際社会に自分たちの権利の尊重と身の安全確保を訴えた。
タイでは、昨年8月にバンコクの繁華街で起きた爆弾テロ事件で逮捕されたウイグル人2人の裁判が行われている。中国人観光客を含む20人が死亡し、120人余りが負傷したこの事件が難民の窮状に拍車を掛けている。警察は、2人がタイ当局による人身売買ネットワークの取り締まりに抗議するためにテロを行ったとしている。ただ、2人は無罪を主張している。

しかし、ウイグル族難民がハンガーストライキを行うに至った背景にあるのは、新疆ウイグル自治区での中国政府の弾圧行為と、反体制派が身を隠そうとするタイや香港などの国外にまで弾圧の手を広げようとしていることだ。中国政府の人権侵害は世界中の政府、そしてイスラム教徒の権利を含む人権保護を訴えるあらゆる人々への挑戦だ。


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